踊り子よ
佐野みお

おまえには赤い照明が似合う
顔に笑みを塗りつけ
何か歌う その歌は
ざわめく客席には届かない

この店はただでさえ暗く
ましてショーの時間ともなれば
隣の客の顔さえわからない
それでいいのだ
みな見つめるのはおまえだけだ

光るドレスをまとい
身をくねらせ
あきらめてきたあれこれを
忘れようとするおまえ
いいのだ それで
私たちも焼けるような酒に
過去を溶かし流そうと
夜毎試み続けているのだから

暮らすために身をさらし
踊り暮らす その先に
何をつかもうとしているのか
とっくに見失ってしまった
おまえ、踊り子よ


自由詩 踊り子よ Copyright 佐野みお 2006-11-12 21:55:57
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