剥がれた兵隊
なかがわひろか

皮膚(かわ)を剥がれた兵隊は
本当は安心していたのかもしれない

あの凍土を溶かすかのような悲鳴は
快感の叫びであっただろう

降り積もる雪が
じわじわと真っ赤に染まる中
新しい己の衣を身に纏い
誰も己と気づかぬことを
彼は嬉しかったのだろう

恐れるは見届ける者
泣き叫ぶは目を閉じれぬ者
快楽に身を寄せる
彼を理解できぬが最なる不幸であった

誰かが纏ってくれるがよい
誰かがまた己となり
血の通わぬ肌で
誰かを愛してくれるがよい

(「剥がれた兵隊」)


自由詩 剥がれた兵隊 Copyright なかがわひろか 2006-11-12 02:03:08
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