ささめゆき
Rin K
かみ合わない歯車に、また少しだけ時がずれる
秒針のきしみは それでも
壊れたメトロノームのように 私を、
追うから
逃げ込んだいつかの雪原で 私は、
細雪がわずかに切れる夢を見た
あの日、こぼれた冬の音を
私はまだ両手に受けている
守るように包めば それは
するすると溶け出して
歯車を少しずつ、
少しずつ滑らかに回した
あの日 同じような細雪の、
隙間から見た空は
わたしと私の結び目をぼかして、また
今年の冬に広がってゆく
満たされて、溺れてしまわないように
精一杯の深呼吸をしたら
懐かしい、淡く曇ったバニラの香がした そして、
ここにも確かに冬が来る
時は、今もかすかにずれている
いつかの雪原は。
地図にはない