ふたつの夜
黒川排除 (oldsoup)

車がまったく停まっていない駐車場は夜の受け皿として平坦に広がっている

打楽器を携えて呆然と立っている猿の子供の目もまた平坦
受け止めるものが何もない目にもうひとつの夜が降ってきた

遠い昔の記憶ではさらに幼い頃冷たい砂漠にいたことになっていた夜が

絶え間なく吹き付ける強風に砂絵をえがくための砂をさらわれて
とっさに追いかけてそのままどこかの星空へ裸足で下っていった夜

だって目が見えない

ずっと同じ星空の下に誰よりも早く来て耐え続けた静寂を割るべく
幻に向かってトントンと打楽器を打ち鳴らす猿 夜を噛み砂を噛み


自由詩 ふたつの夜 Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2006-11-09 09:20:16
notebook Home 戻る