赤い山肌
杉菜 晃



山肌が幅広く剥落して

日に晒されてゐる



真昼時は

まだいいとして

日が傾いて

夕日の色が

濃くなるにつれて



幅広の滝が

血を流してゐるやうで

痛ましい



村はこの風景と共に生き

ほかにこれといつた

景観を持たない



日に数本の列車が

通過する

夕方ともなれば

乗客は片方の窓に寄つて

赤い山肌に

目を貼り付ける



ときどき鳥が

緩急をつけた飛び方で

血の滝に吸ひ取られていく






自由詩 赤い山肌 Copyright 杉菜 晃 2006-11-08 21:22:12
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