秋晴
水在らあらあ





中国人の女の子が
俺をじっと見ている
秋晴の真っ青な空の下
バスは
俺たちを乗せて
ゆっくり坂道を登ってゆく
母親が
女の子の目線をおって
俺と
目を合わせ 微笑む
まだ小さな君は
せかいを知らない
小さな
せかいに不慣れな目で
俺をじっと見ている
中国から
ヨーロッパへ
君は買われて
やさしい金髪の母親よりも
俺のほうがまだ身近に
感じるの かしら
ここにはね
マグノリアなんて
不思議な木もあるし
いいところだよ
今花は咲いていないけど
霧雨の中で映える花だよ
君の国の陶磁器のように
美しい肌を持った花さ
最近この街では
君みたいに
遠くから来た女の子も
たくさん見るし友達は
たくさんできるよ
ここのひとびとは
やさしいから
そう
ジャンっていうんだ
雀 いい名前だね
いい名前ですね
いや、俺は日本人です
もうこの国にずっと住んでいます
きっとずっとすむと思います
ええ
大好きです
この国が好きです
この子もきっと好きになると思います
ああ 中国語を勉強しているんですか
そういえば 街の語学学校の広告見ました
新しく中国語をはじめるって
そうか
そういうことか
それはとても
うつくしい
ことだ
雀と
あなたにとって
言葉は
大切だから
ああ ここで降りますか
そうしたら
さようなら
街で また会うかもしれませんね
雀 元気でね
またね


木屑とタールで汚れた仕事着の俺と
バスクベレーかぶったおじいちゃんと
きれいなお姉さんとアラブ人の青年と
細く編みこんだ髪の毛に鈴をたくさんつけた黒人のお姉さんを乗せて
バスは


このままたいして加速もせずに
坂道の上に着いたらそのまま
空に上ってゆけそうだった
俺の生まれた国にありそうな
秋晴れの空の中に








自由詩 秋晴 Copyright 水在らあらあ 2006-11-07 08:34:22縦
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