「友情の像」
服部 剛

飲み屋を出たばかりの 
ほてったほほを夜風に受けて 
改札に入ってゆく 
友の背中を見送っていた 

気がつくと 
「友情」という像の前に 
僕は独り立っていた 



 
   肩を組み 胸を張り 
   二人三脚のように足をそろえたふたりの青年 

   ひとりはおどけてボールに片足を乗せ 
   ( このボールには夢がつまっているのさ・・・ 

   ひとりは真面目まじめそうに直立の姿勢で 
   ( 信じる道を僕は行く・・・  

   ふたり並んだ腰の間に 
   埋まることのない隙間すきまが空いており 
   それぞれの目線はすでに 
   異なる明日をみつめていた

                          」 


今よりも若かった頃 
たやすく信じていた「友情」の二文字

やがて互いを解かり合えぬまま 
離れていってしまった
友よ 

あの夜 
手にしたグラスを重ね 
夢のをたてては 
夜明けまで語り合った 
友よ 

あれから長い時が流れ 
三十を過ぎた僕は今夜も 
友の背中を見送りながら 
君との別れが残した教訓を 
独り心につぶやいている 

( 人と人との間には、少しの隙間が必要だ・・・ 

もう会うことも無いだろう 
過ぎ去りし日の 
友よ 


今、僕の目の前には 
ふたり肩を組む「友情」の像が 
あの頃と変わらずに立っている 





自由詩 「友情の像」 Copyright 服部 剛 2006-11-06 19:06:13
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