「友情の像」
服部 剛
飲み屋を出たばかりの
ほてった頬を夜風に受けて
改札に入ってゆく
友の背中を見送っていた
気がつくと
「友情」という像の前に
僕は独り立っていた
「
肩を組み 胸を張り
二人三脚のように足を揃えたふたりの青年
ひとりはおどけてボールに片足を乗せ
( このボールには夢がつまっているのさ・・・
ひとりは真面目そうに直立の姿勢で
( 信じる道を僕は行く・・・
ふたり並んだ腰の間に
埋まることのない隙間が空いており
それぞれの目線はすでに
異なる明日をみつめていた
」
今よりも若かった頃
たやすく信じていた「友情」の二文字
やがて互いを解かり合えぬまま
離れていってしまった
友よ
あの夜
手にしたグラスを重ね
夢の音をたてては
夜明けまで語り合った
友よ
あれから長い時が流れ
三十を過ぎた僕は今夜も
友の背中を見送りながら
君との別れが残した教訓を
独り心に呟いている
( 人と人との間には、少しの隙間が必要だ・・・
もう会うことも無いだろう
過ぎ去りし日の
友よ
今、僕の目の前には
ふたり肩を組む「友情」の像が
あの頃と変わらずに立っている