真夜中の発電風車
たりぽん(大理 奔)

真夜中の発電風車が
月を三回切りながら
一回転する
生きていないカラクリ仕掛けは
今日も北の海に吠えていて
生きてもいないのに
時々、さぼったりする

風も生きてはいないのに
ため息であったり
怒気であったり
あくびであったりして
鳥の棲む世界の温度を
僕らの体温と勘違いさせて

追いつめられ
真夜中の海岸線
赤い明滅点をかざし
風を読んでいる発電風車に
「死んでやる」、と
叫びに来たけれど
やっぱり彼らは生きてすらいなくて
それでも、ちょっと不規則に
月を三回切る仕草を
ぼうっと見つめながら

やれやれ、と
思うので

また体温を取り戻しに
僕はそそくさと
車を東に走らせる




自由詩 真夜中の発電風車 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-11-05 23:03:53
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