ラーメンといふ名前の猫
三州生桑

「もしもし?」

全く、この街は気品だらけだ
もっとも、すべて道端に投げ捨てられてゐるが

「もしもし、私を誘惑してよ」

愛する人が気品を投げ捨てた時
私は注意したけれど
彼女は逆ギレ

「私を口説いてちゃうだい」

私は
自分に甘く
他人に甘く
猫にも甘いが
愛する人にだけは厳しいのだ

  ラーメン!

だから私は気品を拾ひながら
この街を駆け抜ける

  ラーメンはどこに行った?
  私のことが大好きなくせに
  引っ掻かずにはゐられない猫

「早く」

気品は二ツ並べて捨ててあることが多い
つまり、カップルが揃って捨てるわけ

「本気?」
「ええ、早く」
「詩人が口説くと、ちょっと凄いよ」

  ラーメン!

「愛してるにゃあ」
「・・・バカ」

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未詩・独白 ラーメンといふ名前の猫 Copyright 三州生桑 2006-11-04 07:32:52
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