冷たく優しい水と
結城 森士

【硝子の川】

川の水の結晶
鋭角の紋様を形作り
白く切る

葉が流れる
白い血潮の上
銀色の岩が
透明すぎる心を
切り裂いている

きっと夜には 涙も流れる
流星の軌跡に 似ている
緑色の葉は赤く染まって

泣いている
紅は泣いている

感情は滝のように
水の中へぶつかっていく
透明なガラスが
足を掻っ切って
赤い糸の様に流れていく

 紅葉



[優しい雫]

月の影に隠れた 一本道
誰も住んでいない 洋館
月の光に照らされた 水溜り
そこに写し出された 月影の男

歪んだ 花びら
白い 花びら
黄色い 蜜
三日月から
雨が溶けて
流れていく

水溜りに歪む笑顔
闇に照らし出された
白い悲しみ

電燈が点滅を繰り返している
少しずつ遠ざかっていく感情

(聞こえないよ・・・)

銀色に煌いた花びら
僕に優しく降る雫か
黄色い 光 か
捨てられた空き缶
電燈の下のホウキ
白い曲線が
僕を描く

紅の傷跡が
夜空を流れていく

月影に咲く花
夜に沈む街
電燈の点滅

そして何も無い


(誰も)


自由詩 冷たく優しい水と Copyright 結城 森士 2006-11-03 12:03:32
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