冷たく優しい水と
結城 森士
【硝子の川】
川の水の結晶
鋭角の紋様を形作り
白く切る
葉が流れる
白い血潮の上
銀色の岩が
透明すぎる心を
切り裂いている
きっと夜には 涙も流れる
流星の軌跡に 似ている
緑色の葉は赤く染まって
泣いている
紅は泣いている
感情は滝のように
水の中へぶつかっていく
透明なガラスが
足を掻っ切って
赤い糸の様に流れていく
紅葉
[優しい雫]
月の影に隠れた 一本道
誰も住んでいない 洋館
月の光に照らされた 水溜り
そこに写し出された 月影の男
歪んだ 花びら
白い 花びら
黄色い 蜜
三日月から
雨が溶けて
流れていく
水溜りに歪む笑顔
闇に照らし出された
白い悲しみ
電燈が点滅を繰り返している
少しずつ遠ざかっていく感情
(聞こえないよ・・・)
銀色に煌いた花びら
僕に優しく降る雫か
黄色い 光 か
捨てられた空き缶
電燈の下のホウキ
白い曲線が
僕を描く
紅の傷跡が
夜空を流れていく
月影に咲く花
夜に沈む街
電燈の点滅
そして何も無い
(誰も)