琉球硝子
はらだまさる

日々の風景が
柔らかい布で
硝子の小鉢を撫でている

堆積する繁華街の雑音と
踏み付けられたスニーカーの踵と
人知れず花びらを千切る風

この窓の外側では
幼い子供の笑い声と家族の灯りが
少しずつ消えて行く

硬化した記憶の
忘れ去られた孤独が
肩を揺らして笑っている

もう戻れないのだ
決して戻れやしないのだ
幾ら悔やんでも悔やみ切れない

どうにかなりそうな
薄い気泡の上で虚勢を張っている姿を
シーサーがみている

珊瑚を砕く波や
空に浮かんだ雲は
興味がないといった素振りで

海の汐を
舌のふくらみで味わい
両手を合わす

泡盛が
くるりくるりと
廻っている

静かに目を閉じれば
小さな波紋が幾つも重なり
それが何かを知る

陽が滲んだ
瞼の裏側が温かい
久遠のうたを





自由詩 琉球硝子 Copyright はらだまさる 2006-11-03 10:19:03
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