夢中
肉食のすずめ

朝が来ない
くらい夢が覚めない
フリルの服を着た
残酷な力を持つ
太った女
私の脳をすくう事に夢中
私は正座の姿勢で耐えている
同じような正座の人々が密集する
この部屋で
私に興味が失せるのを待っている
同じ頃
私の家の前の電柱
それは昔私の母が
金色に塗った
白い小さな花の絵も描いた
母は日がな一日
その電柱を見て過ごす
今ではすっかりそうだ
ところで
電柱の中には実は
弟の首が五つ埋められている
もちろん作り物
本物は埋めた男の腰に
ぶら下がっている
そんな電柱
母は眺めつつ
私の首を折る思考に溶けていく

人々が歩き始める時間
まだ朝が来ない
くらい夢が覚めない
フローリングの部屋の中
私はガラス板の汚れを
とることに夢中
マヨネーズやら
鳥の糞やら
ティッシュを使うと
うまく取れることに気付く
隣では
友人三人が
昔のテレビアニメに
夢中
その中に出ている
戦闘機の名前を
私は連呼するが
誰も聞いていない

人々が帰宅する時間
まだ朝が来ない
くらい夢が覚めない
あるいは私の隣に
タクシーが止まる
いつものゲームへの
招待らしいが
ゲームだった事は
一度もない
次の朝になっても
まだ朝は来ない
くらい夢が覚めない


自由詩 夢中 Copyright 肉食のすずめ 2006-11-01 17:07:28
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