夕照
yukimura

時にいじめられるようになってから
ぼくはずっと生きる方法を考えていた
道ばたのカエルのように
いらない知識は全部捨てて
ぼくはこころで生きるために
こころには生きていて欲しいから
今日こそはからだを死なせなくちゃならない
こころとからだが一緒に生きていく方法を
ぼくは見つけられない
だから小さなボートに乗って
ぼくはどこかでぼくを生むんだ
母がぼくをそうしたように

マンションの7階にあるぼくの家のベランダ
ぼくの人生が手にしたせいいっぱいの高さ
そこから目をつむって飛びおりると
周りの空気がぼくをつかもうとしたけど
それよりも早くぼくは落ちていった
初めてのキスの仕草で
どこまでも落ちていくと
風はリンゴの皮のようにからだをむいていって
突然、胸の隙間から
心臓が目の前にとびだした
その心臓が母の顔になって
何も言うことがないのか 言葉が見つからないのか
だまったまま じっとぼくを見つめていた
あの日の夕暮れのようにだまったまま

詩を書く時はいつも赤い
落下する世界の中で
太陽と血液が共鳴すると
はげしくなったぼくの腕で
新たな関係が生まれる
あなたに出会ったあの日から
ぼくは今でも見つめている
こころの内側に沈む 母なる夕照を


自由詩 夕照 Copyright yukimura 2006-10-29 23:05:41
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