イノシシが知事公邸の裏庭を駆け回る
あおば

猫の子
暢気に
歩いてく
なめすぎた
手足を引っ込めて
片袖を風になびかせて
夕立のように
跳ねてった

イノシシの仔
猫の仔

鬼界ヶ島に
流されたという
俊寛




 高橋さん

隣家の高橋さんは
亡くなってから20年が経つのですが
毎日元気な子犬を連れて
散歩に出かけます。

奥さんは最近始めた
趣味の俳句で忙しそうです。

今日もいそいそと吟行に行きました。
退屈している
子犬たちは
バウバウと吠えて
なにも知らないで
通る人たちを
驚かして
何食わぬ顔して
歩いている
高橋さんを守るんだ。




 催涙ガス弾の水平撃ちは禁止

2回目はありませんと
安心させて
横向いた途端
どんと
突き飛ばす
気絶ごっこが
禁止されてからは
水平チョップの空手
延髄切りの回し蹴り
みんな卒業して
知事さんひとり
公邸で
来るかどうか分からない
イノシシの番をしている。




 専売特許の嬢

シチューが醒めますから
嬢も早くお帰りなさい
市中で醒めたら
酔っぱらいに笑われます

坊やの寝言に大笑い
醒めたはずのシチューが
楽しそうに手を叩いておりました。
プロペラのような幸せが
毎日が繰り返される
少し退屈な回転翼も
コントローラーが
狂ったら
墜落してしまう
この単純な垂直機構こそ
私の
専売特許なのだとは
誰も知ろうともしない。




 体力増強大回転

裏庭モトクロス
そのようなことばが浮かんできて
青少年の体力増強に役立つかも知れないと
思いました。
毎日裏庭モトクロスを30分行えば
誰でも素直なよいこになれるような気もします。




 非凡な太陽

失われた
世界を
呼び覚ます
猪の群れが
街の
あちこちに
出現して
キノコの毒を
食べ尽くして
去っていく

太陽を巡る
地球の非凡な
姿が見える

明るい
朝を告げる
明けの明星に
甘えているのは
辺り触らずの僕




 白粉花

肝の据わった知事さんが
ピンクの混じった
白粉花を眺めて
ぼんやり座っている
午後の4時
イノシシの親子が
黙って山に帰っていく
そんな
話はないだろか
あったらいいね
杉木立




 蝶々


イノシシ武者ならぬ
イノシカチョウに負けた
進学校

行進曲を吹き鳴らす
高校生の一団は
朝から晩まで
疲れることなく
練習をしていた
うちでは
履修漏れなんて
絶対にないのだと
校長先生は
胸を張る



 秋日

エネルギーを内蔵したマシンには敵わない竹とんぼのような恋

永遠なんて
はじめから求めていないから
必然だから
それでよいのだと
秋の日は
思うのです。





謝辞
次の方々の「poenique」/「即興ゴルコンダ」の同名投稿作品を読んだ感想から生まれたもので、各氏にお礼申し上げます。
ピッピさん
ティラノさん
おやまのてっぺんあっかんべーさん
佩慈の工人さん
クローバーさん
かおるさん
ちゃむさん
ABさん


自由詩 イノシシが知事公邸の裏庭を駆け回る Copyright あおば 2006-10-27 01:08:38
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