殤心
キメラ



面影はなくなったのだ
そこにはたらくちからを
しばらく考えもする
不条理ではない 赤い血だもの

とくべつはひかりを放ちながら
平楽のなか 潤いはかぜだったか
中核にむかい やがて永い花屑な時節にすら
罅をえがき 淑やかに染みいる囁きなら
なにを罰とすればいいのだろう

特異なるはひとの変身也
否 戒律から逃れれば
或いは救われの岸辺に
恐ろしく曲々しき電発性の対価
灰色ではなかった黒雨
曇り空にくぐらなかった
あまりにも甘美なる逃走への残骸よ

塗り込んでは そこから傍らに強く靡いていた
なぞるようないのりと 淡き幼さへの終焉奏
ことごとく尖った水泡ひとつ
まもりとおした希少な日光日和よ


残響は充分ななれあいを砕き
面影
ああ面影


ひさかたのうたはこれから埋葬されるのだ





自由詩 殤心 Copyright キメラ 2006-10-25 18:29:07
notebook Home 戻る