船乗り
水在らあらあ








子供の頃は
船乗りになりたかった
世界中を旅して
冒険して
人食い人種にとらわれて
奇跡の脱出
漂流して
魚食べて生きて
雨を集めて
さめを殺して
奇跡の生還
世界中のすべての港に
美しい恋人が待っている
たまには
悪い魔法使いから
とらわれの王妃を助けたりして
惜しまれながら風とともに去る
去んのかよ
いや 去らないかもしれない
そんなことは分らなかったし
今も分らない
ただ
ガリシアの沖で
舟漕いでたときに
もう陸が見えなくなっちゃって
海の真ん中に
大きな岩がいくつも突き出ていて
そこに波がものすごい音を立てて
ぶつかって くずれている
そんなのを見たらさ
何にもいえなかった
一匹の 水でできた
薄い赤の
陸上動物でしかない
おれは
こわくて
叫んじゃった
それも
おまえっていう俺の陸から
大地から
離れちまうような気がしたからだぜ
永遠に


だから
ご飯つくって待ってるから
帰って来るんだよ
そして少しダンスして
いっしょに眠るんだよ
おれもう
どこにも行かないから
どこにも
いかないから




冒険は
おまえの上に
冒険は
おまえとの日々に









自由詩 船乗り Copyright 水在らあらあ 2006-10-21 13:06:36
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