たそがれ窓
未有花

この窓を開けると
いつでも夕暮れを見ることができます
橙色の空と感傷的な思い出たち
それらのものがいつでも見ることができるのです

今真っ赤な夕日が
水平線の彼方に沈んで行きます
あれは幼い頃に見た夕焼けでしょうか
それともあなたとみつめた黄昏なのかもしれません

こうして夕暮れの中にたたずんでいると
だんだん記憶が曖昧になってきて
今こうして見ている夕空さえ
いつの頃に見たものかわからなくなってきます

でもそれでいいのです
いつの日も夕暮れは
思い出の中にあるのですから

茜色の空を一筋の飛行機雲が飛んで行きます
あの飛行機雲はどこまで飛んで行くのでしょうか
きっと日の沈まないところまで飛んで行くのでしょう

こうやって私たちは夕日の中を旅して行くのです
思い出から思い出へと
それは終わることがありません

例え太陽が水平線の彼方へ消えてしまったとしても
わずかばかりの残照にきらめきながら
思い出たちはそこにあるのです

さああなたも窓を開けてみませんか
きっと素晴らしい夕暮れを見ることができるでしょう
そしてあなたの中の
懐かしい思い出たちを探してみませんか

たそがれ窓はいつでも
あなたのそばにあるのです


自由詩 たそがれ窓 Copyright 未有花 2006-10-20 10:44:05
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夕暮れ詩集