グー
ささやま ひろ

いつも笑っていたグー
泣き笑いのような顔だった

勉強の出来なかったグー
けれど絵は上手かった

いつもみんなの笑いものだった


奴が絵の展覧会で入賞し
先生がそれを発表して
みんなが拍手を送った時
奴はこぶしを突き上げて言ったんだ

グー!


グーはいつも僕たちについてきた
何を言いつけられても嫌な顔もせず
ただいつもの泣き笑いの顔で

電車が好きで
何でも答えられたグー
僕たちはやることがないと
踏み切りの前で電車が通るたびに
大きな歓声をあげるグーに何時間も付き合った

グーは
絵を愛し
電車を愛し
植物を愛した



2学期の終わり
グーは突然転校していった
終業式の朝
先生が転校しますって


放課後
掃除をサボって先生に呼び出されたあと
一人下駄箱に向かうと
そこにはグーがいた
とてもキレイなお母さんと一緒に

はじめてみたグーの淋しそうな顔

仲良くしてくれてありがとね
お母さんの言葉に
僕はうまく返事ができなかった

校門を出て二人の姿が小さくなりかけた時
僕は叫んだ

グー!!

振り返ったグーは
いつもの泣き笑いの顔で
こぶしを高く突き上げた
何度も何度も振り返りながら


僕は
いつまでもいつまでも手を振り続けた


二人の姿がとても小さくなって

そして

すこしだけ泣いた






自由詩 グー Copyright ささやま ひろ 2006-10-18 23:02:00
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