午後 の 悪魔。
もも うさぎ
世界を彩るのは 虚偽だけですよ と
午後の悪魔が言った
実際は新聞の色
あぁ、実世界なんてもんはしまうまの色ですよ と
午後の悪魔が言った
言いっぷりだけを見ると
悪魔はもしかしたら
あまり新聞やしまうまを 好きでないのかもしれない
嘘をおつきなさい と
午後の悪魔は言う
世界が少しだけ カラフルになるから
嘘は秘め事の色
睫毛の色
午後の呆然とした空に
世界中の色彩を集めて
虚偽を否定するのは すなわち
愛を否定すること
愛を自己犠牲というのは
間違っています 人間に限り
午後の悪魔は もしかしたら
人間を愛したことがあるのかもしれない
悪魔は 僕の部屋にあったはずの
古ぼけた本を手にしていた
オンフルールで生を受けた 奇人作曲家の生涯を
悪魔はめくる
僕はまた 午後の世界に戻る
次に 逢うときには
苺ヨーグルトを食べてみたいな
と
午後の悪魔は言った