少年
ふるる

湖の絵葉書が届いた

大して親しくなかった人からだけれど
きれいなので捨てられない

大して親しくなかったけれど
その人を思い出す
お互い積極的に話しかけていれば
きっといい友達になれただろう

私はその人の描く絵が好きだったし
その人は何でか、美術館のチケットをくれたことがある

けれどお互い自分に降りかかる問題で精一杯で
(というのは、彼は何かが原因で学校にこなくなってしまったし)
(私は父が失踪して家の中がごたごたしていたし)
友達になれずに終わってしまった

卒業式の日
彼はちゃんといた
話しかけることはしなかったけれど
心の中でありがとうと言った
私の三年間は多分
彼に支えられていたのだと思ったから
彼が美術室に残していった
一枚の絵に

それはひとりの少年が真っ白な空中に飛び出している絵だった

大して親しくなかった人から
湖の絵葉書が届いた

きれいなので捨てられない

じっと目を凝らせば

ひとりの少年がいる

光かがやく水面に飛び込もうと空中に飛び出して



    
          永遠に静止している






自由詩 少年 Copyright ふるる 2006-10-15 15:17:17
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
□□□抒情詩っぽい□□□