もらいもの 
服部 剛

親父・母ちゃん婆ちゃんは 
姉・婿・孫娘のいる富山に行き 
一週間は帰らないので
家はがらんと広くなった 

仕事を終えた帰り道 
夜空を見上げ 
雲から顔を出す十五夜お月さんと話し 
誰もいない家へと続く夜道を歩く 

遠くで闇に光るコンビにに寄り 
パンとバナナと牛乳を買う 

家に帰り 
いつも一日の終わりに話しかける
花瓶の花に水をやる 

湯舟に温かい湯を入れる 

持ち帰った作業着を洗濯機に放り込み 
スイッチを押す 

湯舟にかっていると 
今迄気づかなかった 
このがらんとした家に住んでいる不思議が 
心に湧いて来て 
お風呂の湯気は天井に昇った

ダンボールの家は作れるが 
こんな一軒家は建てられない 
まったくタダで三十年 
二階建ての
この家に住んできた 

( 今頃、富山の家では 
( 四歳の孫娘を囲んで 
( 皆で顔をほころばせているだろう 

風呂上り 
玄関の鍵を閉めに廊下を歩くと 
ふすまが開いた畳の部屋の奥にある 
仏壇に思わずにっこりおじぎをした 








自由詩 もらいもの  Copyright 服部 剛 2006-10-10 23:38:49
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