もらいもの
服部 剛
親父・母ちゃん婆ちゃんは
姉・婿・孫娘のいる富山に行き
一週間は帰らないので
家はがらんと広くなった
仕事を終えた帰り道
夜空を見上げ
雲から顔を出す十五夜お月さんと話し
誰もいない家へと続く夜道を歩く
遠くで闇に光るコンビにに寄り
パンとバナナと牛乳を買う
家に帰り
いつも一日の終わりに話しかける
花瓶の花に水をやる
湯舟に温かい湯を入れる
持ち帰った作業着を洗濯機に放り込み
スイッチを押す
湯舟に浸かっていると
今迄気づかなかった
このがらんとした家に住んでいる不思議が
心に湧いて来て
お風呂の湯気は天井に昇った
ダンボールの家は作れるが
こんな一軒家は建てられない
まったくタダで三十年
二階建ての
この家に住んできた
( 今頃、富山の家では
( 四歳の孫娘を囲んで
( 皆で顔をほころばせているだろう
風呂上り
玄関の鍵を閉めに廊下を歩くと
襖が開いた畳の部屋の奥にある
仏壇に思わずにっこりおじぎをした