*サヨナラ*
かおる

手のひらに虫の息
丸い黒曜石の瞳は虚ろ
彼の本分は
飛ぶ事ではなく
鳴ききる事だからか
若草色の翅脈を透かした羽は
すり切れる事もなく
黒い前胸に刻まれた金糸も鮮やかに
腹の手風琴も今はぴくりともしない
それは儚い 夏の似姿
そう、今年のすべき事は確かに終わり
季節の針が来年の夏真っ盛りを指すまで
サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ


自由詩 *サヨナラ* Copyright かおる 2006-10-09 20:35:44
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