自由への航海
atsuchan69

ただ大海原に船を浮かべるだけでよいのさ、
しかしおまえ達が乗り込んで来る日にゃ
女どもをカッサラッテ来た日にゃ
そして海のうえで暮らすためにゃ、
覚悟がいるゾ、おまえ達よ。

「ザワークラウトの詰まった大樽を積込め!
甲板を磨け、マストによじ登れ――
継接ぎの帆を張って、よいか船出するぞ

見飽きた男爵芋に芽吹いた恋よ
茹でたオクトパスを刻んで塩漬けだ!
林檎に湧いた青虫だって食ってやる、
いつか俺の背中に羽でも生えるというものさ

女、子供に容赦はしない
「だが、そこの可愛いお嬢さん
縫い物は上手いのか?
繕いものは達者か?
――出来るなら、どうか頼む。
俺のハートに本物の愛を縫い付けてくれ!

見ろよ、今しも沈む巨大な生命
煮え立つ海に沸く、深緋の陽炎に包まれて
古びた世界は終わる 「チクタク、チクタク
まるで水平線を赤く滲ませる俺流の
酷い、悪趣味のように。

やぁ! 面舵いっぱい」
無限の風の吹くままに進路をゆだねよ
左舷前方に荒潮にまみれた満月が登る
男どもよ、女達に命ぜよ!
今宵はおまえ達――女に全権を任す

「だが、そこの可愛いお嬢さん
――出来るなら、どうか頼む。
俺のハートに本物の愛を縫い付けてくれ!


自由詩 自由への航海 Copyright atsuchan69 2006-10-08 02:15:31
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