A!
水町綜助
インターネットで獣姦映像を閲覧し、真摯な表情で馬公の怒張を陰部に導く女性の眉根のシワに溜息。入るはずもないのに。
そんなものを見ながら久しぶりに訪れた快晴の休日を過ごした。
一瞬咲き乱れた金木犀も、ひっきりなしに訪れた嵐と雨でアスファルトをオレンジに汚しているだけ、もうすっかり季節は冬。吐く息こそ白くはないものの、自転車を漕ぐ足にすこし力を込めるだけで空気がしんと冷たいことがわかる。
夜になり。インターネットのページをさらに繰る。
さまざまな人間の痴態、奇行、性癖が陳列される。
バナナを噛み砕いて盆の上に吐き出す女。それを見る男。
それをみている自分。
女は煎餅を噛み砕いている。男が覗き込むビデオカメラのレンズに向けて勢いよく吐き出す。男はそれをレンズ越しに見ている。
それをみている自分。
「あ、しまった。明日の天気をみなきゃあ」
僕は思い出した。
天気予報・・・明日は晴れ!!・・・ほっ。
よかった。また雨が近づいているときいていたから。
明日は晴れてくれないと困るのだ。たかが仕事の都合でしかないけど。
そういえばこないだ行った名曲喫茶は面白かった。
饐えきったカビのにおいが充満した暗すぎる照明の店内には、マナーとモラルに溢れたすばらしい善男善女で溢れていた。
そこに流れるここちよい音量のクラッシック音楽。曲名なんて知らないけれど。
僕はそこでガネーシャのレリーフの入った銀のスプーンをもてあそびながらぼんやりとしていた。
ドアが開いて音楽大学の生徒らしい女の子が入ってきた。
何の楽器か知らないが黒いそれらしいケースを抱えている。
店内はいっぱいだ。座れる所などない。
店主が女の子に近づいて耳打ちした。
「その辺りを二三周してきてくだされば」
言い終わるが早いか女の子の目の前、入り口近くの四人掛けの席に座っていた二人の男が言った。
「ドウゾドウゾここを今空けますよ」
きれいな笑顔。男たちは椅子ひとつ分奥にずれる。
女の子は戸惑っていた。
男は二人とも汗と脂で髪の毛を整髪していた。
きれいな笑顔。
椅子は一つ続きのもの。
店主もそれはいいと頷いてニコニコして見守っている。
ほがらかな和やかな心温まる光景。こんな都会の片隅で。
店内に流れるのはおあつらえ向きな人間賛歌。
きれいな笑顔。
女の子も笑顔で「いえいえそんな。お気になさらないで下さい」といい店を後にした。
男たちと店主は不満そうだった。
なんだせっかくきをつかってあげたのに
僕も店を後にして豚丼を大盛りで食べた。
ブヒ