ベンチ
水町綜助

太陽が落ちかける頃
森の中で
ベンチに君と座った
今年最初の蝉の鳴き声
そこで聞いたんだ
月が霞んで見えた


高すぎるビルに囲まれた場所
誰もいない場所をさがして
ベンチに君と座った
強いビル風が吹き降ろして
僕と君は目を閉じた
たいせつな気持ちだけが見えた


似合わない繁華街歩いて
居場所がない
ガードレールに座るしかなくて
その上で君と僕キャンディーを食べた
もう少し静かな町で
あえたらよかった


真夜中の公園
君の家まではあと少し
雨に湿ったベンチに座って
話なんて特になにもない
僕は君の髪のにおいが好き
こどものこころの瞳が好き


電車に乗って僕と君はいろんな景色を見るだろう
電車は窓からの光をいっぱいに満たした光の箱で
空に近い線路を走ってく空中電車
僕たちは頭を寄せあって眠っているだけ
次の駅までどのくらいだろう

暴風雨の吹き荒れる海の国まで

花びらが流れる川のある国まで

君と僕の町まで


自由詩 ベンチ Copyright 水町綜助 2006-10-05 19:27:18
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