スクリュウ
カンチェルスキス





眠れる人魚は
海を失ったことを知らない
もつれた後ろ髪は砂になって
青白い街に降り積んだ




水になりながら
瞬きのほかは
宝石の泡に見惚れてた
かげる頬はいま
深く沈みこんで




歌ってもないのに
人魚の歌声が聞こえた
スクリュウ
光を尖端にして
通過した後では
何も残らなかった




空腹のカラスが
ハードカバーの物語を貫いた
線路がめくれてからまってる
置き場のない錯乱が
尊く地下道から吹き上がって
海に逃げ込んだ




海は海を失った
人魚は海を失った
なぜなのかわからなかった
どうしても
そうなった




月に似た海の底で
おやすみも言わないで
目を閉じている
何も書かれてない
落丁の1ページが
ブランケットのように
人魚をつつんだ




驚くほど速いスピードで
月光が降り注いでた
遠い呼びかけにもこたえず


人魚がふたたび
泳ぎ出すことはなかった











自由詩 スクリュウ Copyright カンチェルスキス 2006-10-05 19:20:22
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