水面を知らない
あおば




金属バットの表面でなぞる
裏面でスライダーを弾く音

 船端で聞いたどよめきは
 確かなものであったのだが
 護送船団が沈められて以来
 運ぶものが居なくなり
 声を聞くとも適わなくなり
 浮沈戦艦ヤマトの歌声に
 今日の糧を得たる思いがして
 涙を流すことが多くなった

金属バットの表面で
浮沈戦艦をなぞらえる
金属バットの表面で
大日本帝国の礎をなぞらえる

石のない国に生まれ
材木に跨って海を渡り
金属化した住民の願いを
込めて
空振り三振を唱える
駱駝

ヤマアラシ
キタキツネ
サンショウウオ
空振り三振を唱える
カラタチノボル

船縁を叩いて
金属バットが
海面上昇を
拒否する
金属バットのすれ違いの夜

眠ることはない
光のないクニへ
向かう夜だから



未詩・独白 水面を知らない Copyright あおば 2006-10-04 22:49:25
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