びょ、ーき
吉田ぐんじょう


曖昧に舌を含んで
ただ笑った
あなたの考えている事は解らないと
言われたから
悲しむだけの隙間も無くして
ただ笑った
薬は二週間分出たから良かった


フォークを持つと
人が止めるから
ハンバーグは匙で食べる
悪戯にソースばかりが
前掛けを汚して
今日もあまり食べられなかった


夜中に起きると
隣の部屋から
色々な相談が聞こえてくる
切なくてくしゃみをしたら
声が止んだ
でも
また始まるって知ってた


遣る事が無いので
丹念に鉛筆を削ったら
翌朝すべて捨てられていた
遣る瀬無くて爪を噛んだら
血が出たから
日記はひとさし指で書いた


病気
という言葉は陰気で
びょ、という音で
色々汚いものが表現されている気がする
ーき、という音で
汚いものは汚いまま
放り出されるような感じがする
だからわたしのことは
もっと綺麗に形容してくれたら良いのに
エルフとか魔法使いとか小人とか

と考えているうちに
どうも日が暮れたようだった



自由詩 びょ、ーき Copyright 吉田ぐんじょう 2006-10-04 17:53:17
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