石榴人形
shu

今まで包まれていたものが割れ 
開いた胸の中にちょこんとおさまって
さいごのごあいさつ

ぽつりと佇んで微笑んでいる 
あなたのからだが
いまはこんなにも
はっきりと見えるのです

手をそろえて
足を伸ばして
傾いた首をまっすぐにして
髪をといてあげましょう
顔だけがぶれているのは
わたしの手が震えているからでしょうか

すすけて汚れたからだに
唇ふれると紅く発光し
ひとつずつ
ゆっくりと
透きとおっていくので
わたしはそのたびに
抱きしめて

はりつめた薄いくちびるの冷たい感触を
舌で確かめながら
ひと噛み
ひと噛み

やわらかな薄い粘膜を破って
あふれでる記憶のしずくは
しずかにうねる永劫の海におち
わたしたちはその中で
漂うように眠るのです

おやすみ あなた
おやすみ わたし
おやすみ ひとつになれなかった
     わたしたち





自由詩 石榴人形 Copyright shu 2006-10-04 15:42:14
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