切り抜いた秋の箱
ぽえむ君

微かに薄い雲の
漂う空が秋になっていたので
できるだけいっぱいに
四角に切り抜いて
箱の一面に貼り付けて
森へ行こう

こおろぎが鳴く
葉の色が秋になっていたので
できるだけいっぱいに
四角に切り抜いて
箱の一面に貼り付けて
空を見上げた

自由に泳ぐ
とんぼが秋になっていたので
できるだけいっぱいに
四角に切り抜いて
箱の一面に貼り付けて
森の向こうへ

流れる小川の
水の色が秋になっていたので
できるだけいっぱいに
四角に切り抜いて
箱の一面に貼り付けて
田園が広がる

豊かに実った稲の
土の匂いが秋になっていたので
できるだけいっぱいに
四角に切り抜いて
箱の一面に貼り付けて
夕焼けに包まれる

赤く染まった空の
影の形が秋になっていたので
できるだけいっぱいに
四角に切り抜いて
箱の一面に貼り付けて
ふたを閉じる

箱の六つの面に
それぞれの秋を貼り付けて
その中には
秋の風がいっぱいに
詰め込まれている


自由詩 切り抜いた秋の箱 Copyright ぽえむ君 2006-10-03 14:40:19
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