富士に会いに
ワンダー

富士に会いたいと思っていた
ずっと、昔は会っていた
のぼりにいったこともあるくらい
私たちはかなり親密だったと思うのに、
いつのまにか、会えなくなった
会わなくても、遠くからちらりとみる
なんてことくらいはできたけれど
なんだか、今はそれじゃあいや

富士に会いたい
もっと大きい富士に会いたいの
もっとしっかりみつめあいたい
そんな気持ちがこのごろおさえられなくて
苦しいまでになっていた

そんなあたしが今日、山梨行きのバスにのった
このバスは、スーパーのちらしでみつけて、
応募した、無料の日帰り温泉バス旅行
だって、チラシにはくっきりと富士の姿がうつっていたんだもの
温泉もぶどう狩りもどうでもいい
私のねらいは富士

そうよ、どこまで、私ってラッキイ
お金がなくても情熱があれば大丈夫よ
高倍率の抽選にあたったのよ、私
たくさんのにぎやかなおばあさんたちと一緒にバスにのっているの
夢はどんどんかなうわ

私は、それでもって、晴れ女
ほら、昨日までの雨がうそのように晴れて
いよいよ富士に会える
どきどきしていたら突然、バスのまどから、大きな大きないとしい富士があらわれたl
やっぱりふいうち 当然ね
私は、思わず気をうしないそうになったけれど、
そんな場合じゃあない
くいいるように富士をみつめる
雪はないの?黒い富士なんだね。
いいんだよ、
どんな姿でも やっと会えたのだから
富士も私をみつめている、うっとりとみつめている

喜んでいる私たちにガイドさんの声
「この時期富士山がみえるなんて、みなさんついていますよ
はい、このコースは富士がみえるのはここだけですよ
目的地ではみえないので。
はい、みなさん。よかったですね。」

愛しい人との再会は一瞬だった
これが、やはりさだめなのね
でも、一瞬を永遠にとどめる秘術はもう会得しているのから、大丈夫、
私って、旅じょうず、やっぱりね
富士に会えて、私のいのちはまたのびたのね
ありがとう、富士




自由詩 富士に会いに Copyright ワンダー 2006-10-02 18:16:35
notebook Home 戻る  過去 未来