わたしの猫
石瀬琳々

わたしの中に棲む猫は
夜の闇のように黒い
天鵞絨ビロードの艶やかな毛皮をもっている
そして
悩ましい緑の目をしている
人に媚びたりしない
いつも物陰からうかがうように見ている
逆に人間がうらやましいのだ


彼は
(雄なのである)
きれい好きで念入りに身繕いをする
そのくせ 冒険が好きだ
体中に傷をつくり
遠くへと行きたがっている
空を見上げるたびに
身内に何かをため込んでいる
多くの猫にもれず
夢を見る生き物なのだ
やさしい陽だまりにまどろみ
青い月夜には恋もする


猫よ ねこ
わたしの猫よ
お前は今もどこ吹く風
たまには甘い声で鳴いておくれ
わたしにふいにすり寄って来ておくれ
お前が気まぐれなのは
分かっているつもりだけれど
猫よ



自由詩 わたしの猫 Copyright 石瀬琳々 2006-10-02 15:49:35
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