alpha 103号室〜to my mother〜
コトリ

8月 某日 103号室 郵便受けのメモより



前略 ママ


毎週の訪問感謝しています。
一週間分の食事をハナさんに作らせて冷凍して持ってきてくれることも
僕の代わりにしてくれる掃除・洗濯・日用品の買い物など
お嬢様育ちのママにそんな手間をかけさせていることももちろん
なにより心配して来てくれていること
言葉では表せないようなありがたい気持ちです。


ただ、僕は今の生活が入学当初にパパのおっしゃった
「自立生活」というものとはかけはなれているように感じるのです。
周囲の学生達はもっと、なんというか、適当な暮らしをしているのです。
たとえば、授業のない日は昼まで眠り朝食を食べなかったり
もっとひどい場合は授業を何らかの口実で欠席することもあります。
また、驚かずに読んでほしいのですが、
僕の両隣の部屋には異性が宿泊していることもあります。


もちろん僕はそうした堕落した生活を望んでいるわけではありません。
ただ、ほんのすこし僕を信じてはもらえないでしょうか。
例えば、毎朝7時に起床し
毎晩6時に帰宅し家で夕食をとっているかどうか確認の電話をすることを控えたり
毎週一度のママの訪問を二週間に一度に控えたりしてはもらえないでしょうか。
……誤解しないでください、ママを嫌いになったわけではありません。
ただ僕ももう今月で20歳ですし、周囲の学生のようにサークル活動にいそしんだり
一度でかまいませんから「コンパ」と名の付く学生だけの宴会にも出席してみたいのです。
もちろん勉学への姿勢に変わりはありませんし、
こうした社会経験もパパの会社を継ぐにあたって良い影響をもたらすことと思います。


部屋の鍵を無断で換えてしまい申し訳ありません。
門前払いのようですが、どうかさびしい思いをしないでください。
とにかく今週はこの手紙を持ち帰り、パパとご検討願います。


追伸
郵送でもかまいませんので、ハナさんの料理は途絶えぬようにお願いします。
ママの言うとおりコンビニ弁当やジャンクフードは食べられたものではありません。



自由詩 alpha 103号室〜to my mother〜 Copyright コトリ 2006-10-02 07:52:53
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