刻めない時計
海月

君の頬を伝う
一滴の感情
床にぽつり、ぽつり
時を刻む時計の針よりも遅く

言葉のナイフで君を傷つけた
僕をその事を知ったのは次の日の朝になってから
隣で寝ている筈の君の姿がない

テーブルの上には冷めたスープと黒パン
置き手紙がヒラリと宙を舞う

さようなら
探さないで下さい

僕の頬を伝う
一途な想い
温もりを失うベット
秒針は確実に未来を告げる

言葉のナイフで自分を切りつける
心の痛みが僕を締め付けた
君の痛みに近づけたのだろうか?

こんな時にこんなことを考えている
真っ先に君の元に走れたら
それを愛と呼べるはず

月日は流れ季節は何度も色を変えて
僕は年老いて遠い昔を思い返す日々

テーブルの上では何もないスープの容器とカビて萎んだ黒パン
色褪せた紙切れ

全てがあの日のまま
カレンダーもあの日の日付
何もかもあの日のまま

僕の心は刻めない時計




自由詩 刻めない時計 Copyright 海月 2006-10-01 22:00:21
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