お皿の傘 〜はっとりんぽえむ・その1〜 
服部 剛

雨が降る日に鎌倉の寺に行き 
賽銭箱に小銭を投げて 
ぱんぱんと手を合わせ 
厳粛な顔つきで 
びにーる傘をさしながら 
帰りの細道を歩いていたら 
濡れた路面につるんとすべって尻餅ついた 

誰もいない道の真ん中で 
なぜだかとってもはずかしく 
何事もないそぶりで 
すっと立ち 
傘をさしたら 
変わり果てた姿になっており 
ひっくり返ったお皿の傘をさしたまま 
阿呆あほうのように細道を歩いた 

( これ、捨てちゃおうか・・・? 
( いやいやいかん・・・ 
( このおんぼろ傘は 
( 日常で愛を求めてはずっこける 
( おいらの化身のようではあるまいか・・・ 

これから乗るバスの中で 
(( ♪ぴんぽんぱんぽん )) 
「車内連絡・車内連絡 古都鎌倉の町を美しく
 心ないゴミのポイ捨て やめましょう   」
(( ぴんぽんぱんぽん♪ )) 
乗り換えた電車の中で 
人ごみあふれる駅構内で 
人目をちらちら気にしながら 
あわれな姿で閉じられないお皿の傘を小脇に抱え
だまつておいらはゆくのです 

( 転んでも、タダでは起きちゃ、ならぬのら 

電車を降り
わが家に続く帰り道 
はずかしそうなのに無理してどうどう胸をはり  
あわれな自分の化身を小脇に抱いて 
わが家の粗大ゴミ置き場に向かって 
しとしとと降る雨に濡れながら 
今までの幾多の失敗を
鼻歌まじり♪の歌に変え 
はっとりんは今夜も
歩いています 



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜幕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 





未詩・独白 お皿の傘 〜はっとりんぽえむ・その1〜  Copyright 服部 剛 2006-10-01 21:24:13
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