鎌倉・報國寺 〜初秋〜
服部 剛
久しぶりに訪れた
報國寺
(
ほうこくじ
)
は
雨が降っていた
壁の無い
木造りの茶屋の中
長椅子に腰かけ
柱の上から照らす明かりの下
竹筒に生けた
秋明菊
(
しゅうめいぎく
)
を傍らに
膝の上に空白の日記を開き
今日の日を
綴
(
つづ
)
る
目の前の長椅子に
若い夫婦と子供の兄弟
雨に濡れた
無数の
紅葉
(
もみじ
)
の葉傘を
四人黙って眺めている
父の大きい手のひらから
渡された茶碗を
息子は小さい両手のひらいっぱいに抱え
「 おいしい 」
と抹茶を
啜
(
すす
)
る
四人家族の向こう
無数に立つ竹林の隙間に
傘を差す ひとりの背中が 消えた
自由詩
鎌倉・報國寺 〜初秋〜
Copyright
服部 剛
2006-10-01 20:23:48
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