古典詩ほうらむ(初段)
ぽえむ君

今は昔、をとこありけり。
片田舎に住みければ、いとあやしき箱にて文を交じらふ。
箱の中に、あまた集ふ詩歌の会ありて、よき歌には人々
より数を賜る。
思ひ起こして歌をばと箱の中に投げ打つも賜ず、詞だに
なかりければ、流れ早く失せにけり。
うちひそみてえ歌はじと思ひつるも、歌を愛づ心ありけむ、

 とどまらず歌も涙も流るるも
    歌の心を箱にとどめむ

と詠みければ、心をさまりけり。
昔人は、かくいちはやき雅をなむしける。

(現代語訳)
今では昔の話になっしまったが、男がいました。
田舎に住んでいたので、とても不思議な箱(パソコン)
を使って文をやりとりしていました。
箱(パソコン)の中に、多くの人が集まる詩歌の会があり、
良い歌には人々から数(ポイント)をいただけました。
(男は)思い立って「(自分も)歌を」と箱(パソコン)
の中に投げ入れたけれども、数(ポイント)はもらえず、
詞(コメント)さえもなく、(箱の中の歌の数の)流れ
が速く、(男が投げた歌は)なくなっていきました。
(男は)泣きそうな顔で「歌は作るまい」と思うものの、
歌を愛する心があったのだろうか、

 止まることなく歌も涙も流れていくけれど、
     歌の心を箱の中にとどまらせよう

と(歌を)詠んだところ、心が治まりました。
昔の人は、このように素早く風雅を楽しんだものでした。


未詩・独白 古典詩ほうらむ(初段) Copyright ぽえむ君 2006-10-01 15:49:59
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
古典詩ほうらむ