くちづけ
銀猫

呼んでいる
呼んでいる

濃紺の夜長に虫の音響き
深くこころの闇夜のなかで
銀の鈴をしゃん、と鳴らして
呼んでいる

待っている
待っている

金木犀の匂いが止み
あたりに静けさが熟して
いたずらに時が進まぬ季節を
絡んだ毛糸をほぐしながら
待ち焦がれている


凍える季節に差し伸べられる
人肌温かい手のひらのために
そういう愛情を求むるわたしに

熱を帯びたこころ総てを
明け方の冷気に晒しながら
待っているのは
逢魔が刻の
ひとたびのくちづけ

いまひとたびの







自由詩 くちづけ Copyright 銀猫 2006-10-01 12:46:16
notebook Home 戻る