鴎盟(かもめとの約束)
新谷みふゆ

そのうちね・・・ と
かもめとともだちになる約束をして夏が過ぎていく
飲み干した炭酸水は檸檬味
酸っぱければ酸っぱいほどよかった

冥王星が惑星でないと新たに決まった夏の夜だった
この世界の決め事は 人の眼から見てと云うことで
本来の姿は知れたものじゃあない

その都合を許せない時に その人の姿が見えてきた
その都合を許せた時には 物事の姿が見えていた
やさしいって云うのは機嫌のよさじゃあない
そんな歌が傍に来る

内側のことを考えても 愚かな分余計で邪悪なものが入り込む
ぎぃぎぃとあたしから音がする
いつか魚のような骨組みになるまで 軋み続けるのだろう


最後の氷菓子は
いつも白いシャツを紅く汚して夏を綺麗にする
近付けば遠退く逃げ水のよう
いいことも 悪いことも そんなに変わりない

不思議なことに隣の犬は鎖を外し何処かに消えた
不思議なことにする
そう云う痛みを時はやわらかな空気で包んでくれる

きみにはもう逢えないと右の眼で想い
何年かは生きるのだからわからないよなんて左の眼で想っては
ちぐはぐな視力のずっと奥
薄れてゆく残像が鮮明な印象を描いていた

降り始めた浅黄色の雨が かもめを遠くへと運んでいく
町の音を耳に沈めながら歩くと
あたしの骨が乾いた音をたて笑っていた


自由詩 鴎盟(かもめとの約束) Copyright 新谷みふゆ 2006-09-28 10:23:49
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