独リ咲ク花

何てこたぁない事さ
ととぅは貧畑耕して
かかぁは咳して血を吐いて
チビたちゃひもじさに泣いただけ

生きてく為の口減らし
何の自慢にもなりゃしねぇ
死に場所求めてふらふらふらり
腹が減ってはふらふらふらり
其処へ男が声掛けた

あたしは只々ひもじくて
無言でこくりと頷いた
誰だか分からぬ見知らぬ男
そいつに連れられ峠越え

まんまが食いたきゃとっとと歩け
辺りは荒んだ田畑のみ
急かす男に無性に腹立ち
足元目掛けて唾吐いた

嗚呼 視界が揺れる
日が沈む
あたしの頬はずきずき痛む
男の影を踏んで行く

そしてようやく行き着いた
此処は色町花廓
日毎日毎の折檻に
耐えれず涙
また涙

そうしてあたしは着実に
ようよう女になっていく

あたしを嘲う浅黄裏
否定はしねぇ そりゃそうだ
中途半端な面表
両腕足らずな芸事晒し
それでもあたしは此処に
手練手管を磨くのさ

此処は色町花廓
あたしはひっそり咲き誇る
男の腹に跨りながら
尊い愛を撒き散らす




自由詩 独リ咲ク花 Copyright  2006-09-25 00:49:29
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