秋空
捨て彦

季節をぜんぶ




秋にしたい










生まれ変わってもおれは男でいたい
女になるのは嫌だ
おれは次ぎに生まれるときもぜったいに男でありたい










女になりたい
おれは女になってみたい
綺麗な女のひとになってみたい






もしおれが
綺麗な女のひとに生まれ変わったら
都会の
都会の端っこのほう
場末の小さなスナックに勤めて
おしゃべりなママと数人の同僚と常連のいる店で
毎日毎日飽きもせず馬鹿みたいにお酒を飲みたい
ヤマトナデシコ七変化の振り付けを覚えて
常連さんの前でそればっか歌って適当に暮らしたい
煙草を吸って
ぼーっと足を組んでいつもけらけら笑っていたい




もしおれが綺麗な女のひとに生まれ変わったら
都会の風俗に勤めたい
そんで最低な奴と
普通の奴とイイ奴とホントどうしようもなくイタイ奴を
まったく平等に相手して
平等に相手して働いた分だけのちゃんとしたお金をもらいたい
引きこもりの奴が人恋しさで話だけしにきた時も
他の人と同じようにお金はもらうからね、
とか言いながら
ビールは飲み放題ということだけはちゃんと教えてあげたい






(ぜんぶ秋にしたい






もしおれが綺麗な女の人に生まれ変わったら出会い系をやってみたい


平日の昼間に駅ビルで待ち合わせして
素性の知れない極めて普通な男とセックスしてみたい
スタバで申し訳程度の世間話をして
そろそろ話すこともなくなって
そろそろ不穏な空気が漂ようか、
というときに席を立ってラブホ街へ歩いていく
その途中でゴミ捨て場のカラスと目が合う

そういう秘密を作って何食わぬ顔でいつもの日常にもどりたい
次ぎの日からまた
いつもの生活を送りたい






高校生の女の子になりたい
平日のあさ
いつもどおり家を出て
そのまま付き合っている男の子の家に行って
お菓子とかジュースを食べながらロクヨンとかやりたい
それでなんとなく昼前くらいに
制服を着たままセックスがしたい




それでしばらくしていつか
いつかおれみたいなふざけた奴に出会って
そういうの青春やな、
とか言われたら
途端に目を丸くしながら
別に普通やで

って戸惑いもなく言い返したい
そうして意味もなく無邪気に笑っていたい










ぜんぶ秋にしたい










おれがもし綺麗な女のひとに生まれ変わったら
すべての季節をぜんぶ
すべての季節とか街とかあらゆるすべてのすべてをぜんぶ秋にしてしまいたい
瞬きのしゅんかんも
消えていく笑い声も
街の風景とかぜんぶ
どうしようもないほどの秋にしてしまいたい






秋にしてしまいたい




自由詩 秋空 Copyright 捨て彦 2006-09-24 23:13:05
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