春の葡萄
たりぽん(大理 奔)

夜の長い季節がめぐって
今年もまた
潤んだ果実の薄皮が
あなたの細い指先ではじけて

  枯色の穂の律動

その春のようなくちびるに
すべり込むのです


かわききった大地で
砂に洗われながら
わずかな想いの湿りを集めて
失うことのおそれを酸味にかえて
あこがれる力を甘みにかえて

  鈍色の夜の鈴音

その春のような口元で
はじけるのです


時が流れるものだと
誰が思いこませたのでしょう
薄皮で隔てられた
小さな、ちいさな体内で
わずかな想いの湿りを集めて
永遠にしようとした時を
その春のような

くちびるに







自由詩 春の葡萄 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-09-23 23:17:25
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