夫婦箸
恋月 ぴの

あなたとおそろの夫婦箸
いまはもう使う気にもなれない
あの頃は愛の姿を信じていた
同じ季節の同じ日々
それでも、素肌に感じる感触は
あの頃とは確かに違っていて
ひとり台所に立てば
化学の実験の真似事でもしてみる
白砂糖を真水に溶かし
ゆっくり煮詰めると
透き通る黄金色の液体になる
それを紅葉柄の夫婦箸に絡めて
掬い上げれば
あなたの軽い冗談を真に受け
何処までもついて行こうとした
あの頃を思い出してしまう
あなたの冗談を
わたしの涙で溶かし
ゆっくり煮詰めても
こんな色合いになったのかな
世間体という型に流し込み
夫婦箸が似合うふたりだったのに
待ちきれない
じれったさのなかで
終わりの終わりに気付いたら
紅葉吹雪は秋の気紛れ
あなたはいない



自由詩 夫婦箸 Copyright 恋月 ぴの 2006-09-23 22:13:44
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優しさを忘れないように