朝焼けの声 
服部 剛

気がつくとそのひとは 
明け方の無人列車に乗り 
車窓に広がる桃色の朝焼けを 
眠りゆく瞳で見ていた 

列車がトンネルに入ると 
全ての車窓は真黒の墨に塗られ 
闇の空間を走り抜けると 
再び視界には 
桃色の世界が広がる 

その女は 
眠りゆく意識の中で 
「 人生みたい・・・ 」
と呟いた 

いくつもの雨と嵐の夜を過ぎ越し 
視界に広がる夜明けをみつめる女を 
列車は連れてゆくだろう 
今は亡き
母の胎から生まれる前に 
約束された名前の無い駅へと 

閉じかけた瞳の先にみつめる朝焼けの空に 
在りし日の母のまなざしが浮かぶ 

眠りゆく意識の中で  
遠い過日から
娘を呼ぶ
懐かしい呼び声が 
木霊こだまする 





自由詩 朝焼けの声  Copyright 服部 剛 2006-09-23 20:39:46
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