やせっぽちのあいつ
ZUZU

背の高いやせっぽちのぼくのともだちが
しろい坂道をくだってゆき
曲がり角を折れてそのまま
消えてしまう
そんな夢をみた

ぼくは追いかけなくちゃと
いっしょうけんめいころがるように
追いかけて
曲がり角の手前で追いつき
やせっぽちのあいつの肩をたたいた

あれは…なんだっけか…
あれさ…きみの好きな歌。
なんだっけ?
それが知りたくなったんだよ。
とても知りたくなったんだ。
歌っておくれよ。
ねえ。
お願いだから。


 川のすこしだけうえを
 まっすぐな風が平行にわたっていくと
 きらきらした魚がおなかを空にむけて
 無数のせつなさがあわつぶのように弾けた


ともだちはいつもの
こわれかけた、さびしそうな微笑で
しかたがないなあ…って…
ギターを抱えてくれた
ぼくはもうそれだけで泣きそうになって
ふるえる指先でこめかみを押さえ

すこし話をしようよ。

 ともだちの歌が空にとけてゆくと
 夏はもうすぐ忘れかけた
 とうめいな昨日のなかに消えゆくようだった


ぼくとともだちは
川の手前で永く話した。
なにかだいじな、
なにかたいせつな話だったとおもう。

そのまわりのほうだけを、
ぼくらはいつまでもめぐっていた
もう行かないで、
って
ぼくはただ伝えたかったんだけれど、
やせっぽちのともだちには聞こえたかしら。




自由詩 やせっぽちのあいつ Copyright ZUZU 2006-09-23 19:15:06
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