彼岸花の咲く丘
LEO

彼岸の頃になると
その場所は
真赤に燃えるようでありました

急な勾配の細い畦を上れば
今来た道を遠くまで
見渡すことのできる墓所
形を成さない朽ちた石版と
名も読めぬほど苔むした石碑が
順よくならんで
白い菊の花が
一輪ずつ供えられていました
背後を深く木立がおおい
ひんやりとした空気が流れます
それらを取り巻くように
見事なまでの彼岸花が
真赤な花弁をひろげ
毎年のように私を迎えてくれるのです
まっすぐ伸びた茎の先の
それらはまるで
魂のようにも思えましたが
下を見れば
黄金色の田んぼの脇にも
彼岸花が揺れ
鼠を駆除するのに植えたのだと
祖父から聞いたことがありました

コンビニもスーパーも
信号機さえなく
田んぼと畑が広がる山間の
ここが私の生まれたところ
この丘に上るたび
諦めとも懐かしさともつかない
不思議な気持ちになるのです

ああ
今年も赤い彼岸花が


自由詩 彼岸花の咲く丘 Copyright LEO 2006-09-22 12:54:15
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