nayameruブタ
水町綜助

暑さ蒸し返し始めた

暑さ

黒いパーカの袖は汗に湿って

そして子供の頃にも一度感じたことのある憂鬱またやってきた

しずめつづけられる

意識の基礎がそれに塗りこめられて息がしづらい

でもその上に立って僕は笑顔を浮かべるよ

浮かべなきゃいけない

ことになってる

今は

みんな見てるから



鰯雲

渋谷の町の建てかけのビル

反射するガラスで壁を敷きつめられたビル

これから何十年そこに立ち続けるのか

これから死んでゆくだろう 僕に優しい人らがあのビルだったらいい



あたらしい人が生まれて

生活してゆく

たくさんの老廃物を生み出して

そしてそれを両手いっぱいにすくい上げて

真夏の太陽に差し出す

腐らせて

それは僕もしてきたこと

同じように腐らせ

カスは土に

腐臭と魂は空気に

僕のしたことと同じように倣って



池袋を歩く

沢山の人たちが地下街を行き交っていてその人たちは

地下道の路地を折れていくか

電車に乗ってゆく

僕は階段を上りゲームセンターを横目に地下道から出た

小学生のたいくつ

中学生の生殖器

高校生のにきび

会社員のえがお

クラクションクラクションヘドロまみれのポリバケツ

中華屋

僕は歩く

暗い会社

何件もの寺院

暗い会社

高速道路でも作るのか

何キロも先まで

縦長の空き地が途切れ途切れに伸びている

そのさきは新宿のビル群が見える成功都市かすんで

僕は都電雑司ヶ谷駅の線路をまたぐ

鉄錆の線路に小さな踏み切りトラ縞

開くのを待つ僕と老人と白いワンボックスカーとアジサイ色のTシャツのおばさん空気を見るような目そして銀色の自転車

わたりきるとすぐに大きな霊園の入り口があった

僕は中には入らず生垣を伝って歩いた

無数の墓石が湿っぽい雑木林の中に堆く積み上げられていた

霊園は入り口から想像するよりもはるかに広く

歩いても歩いても

途中途切れてもまた敷地は始まり墓石は連なっていた僕は歩く

沢山の人の骨がここにはあるネ

沢山の

似てるけど少しずつ違う理由で死んで

そして生垣の向こうに埋まっている


空は七色の中で青色だけが強くて


不意に生垣の切れ目から人が飛び出した

アロハシャツの老人

横切った

薄いピンクのシャツ

何層ものボートの絵柄

玉の汗を流して

少し笑っていた

力強い足取りで歩き枯れ枝を踏み折る

鼻腔にビャクダンの香り通る

そして目の前からはおなかの大きくなったおんなの人が



夏の中を歩いてきた

夏の中を歩いて

夏の中を歩いている


僕も歩いている

そして刻みだす



女はそこにあるだけ

生まれるはそこにあるだけ

死ぬはそこにあるだけ

現実はそこにあるだけ

高速道路はそこにあるだけ

男はそこにあるだけ

池袋はそこにあるだけ

サンシャイン60はそこにあるだけ

僕はここにいるだけ

ギターは

地球儀は

CD-ロムは

仏陀は

フェンスは

ゲロは

ひなげしは

子供は

パンは

ブドウは

キジネコのあくびは

護国寺は

心臓は

田代まさしは

皇太子は

ギュウドン一日のみ復活は

涙は

東京は

赤土は

青唐辛子は

国会議事堂は

精液は

蜜月は

今宵は

あなたは

クラッチは

俺は

わたくしは

拙僧は

わたくしめは

朕は

君は

クルクルパーマは

ゼロは

癌は

キーホルダーは

リモコンは

博物館は

火傷は

サイアミーズドリームは

鉄は

絵は

針は

糸は

TODAYは










空は七色の中青色だけが強くて
























自由詩 nayameruブタ Copyright 水町綜助 2006-09-21 22:40:52
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