えびちゃん
銀猫
二十代の頃から
わたしの思考回路はストレスに負け気味で
いつしか心療内科のお世話になり始めた
抗鬱剤 抗不安剤 精神安定剤 入眠剤 など
とりどりの薬に身を任せているのが常となり
何処までが本当の自分なのか、遠くで見ている自分を感じる
ある日、夫と食べた回転寿司
お皿に海老の尻尾で向日葵の花が出来るほど
好物の海老ばかりをたくさん食べて
とってもとても満腹になり
お茶をたくさん飲んで
ちょっと席を立った
誰も他には居ない
トイレの鏡の前
手を洗おうとしたら
何だか変だ
蛇口に手が届かない
服もなんだかぶかぶかしてるし
変なの!
それにそれに
なんだかとても気分がいい
悩み事なんて無いみたいに
波のように
無邪気に笑いたくなるし
お気に入りの水色のコートで
くるり、とターンしてみたい
やけに広い寿司屋のフロアを戻って
席に着くとわたしを見て目を丸くしてる
どうしたの?
何か付いてるのかな?
「どうしたの?パパ」
「えびちゃん、眠くなっちゃったよう」
「じゃあ、もう帰ろうね」
パパはいつもより優しいみたい
「えびちゃんは何歳(いくつ)?」
「えびちゃん、四さいだよー、パパ忘れちゃったの?」
車のドアをお姫様みたいに開けてもらって
乗り込んだら
パパがどこかに電話をしてる
せんせい、ってだあれ?
ねー、パパ。