葡萄色の
Rin K



夕闇の
あの色が好きです
切なさをひとつぶ
いとおしさを一粒
弄んでは
つぶすたびに
広がってゆく葡萄色

甘いあまいのは
街の匂い
あなたとはぐれた
秋の匂い

五線紙どおりの
狂いなき旋律が
漏れ出づる角のはちみつ屋
あのこのバイエルはもう黄色
プラタナスもまた染まる

季節は一巡し
時計が一巡する
心もまたひとめぐり
あなたに戻ってきては
この日だけは
思い出すことに許しを請いながら
切なさをひとつぶ
いとおしさを一粒
弄んでは
つぶすたびに
広がってゆく葡萄色

夕闇の
あの色が好きです








自由詩 葡萄色の Copyright Rin K 2006-09-18 01:43:26
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