【 見失ったもの 】
豊嶋祐匠
見失ったものを
取り返す
ことはできない
見失う前に
守る方法は
この世には無いから
突然
目の前に
巨大なものが現れ
いったい
これは
何だろうと見上げる
手探りで
押しのけながら
形を探る
まるで
大きな
雨雲の中に入ったように
過ぎ去る
雨を
頬で感じ取りながら
通り過ぎて
行くのを待っている
目の前が
明るくなり
後ろを振り向いた時
遠くに
過ぎ去ったものが
見えたら
初めて
それが
何だったかを知るだろう
この世のものは
すべて
失って行くものばかりなんだ
けして
留めておくことは
出来ない
見失うもの
というのは
君が
いつまでも
在るべきものだと
信じ込んだ時から始まる
すべては
失ってゆくもの
それは
ただ
感じ取る為だけにあるんだ
そう
思うことが出来たら
君が
見失うものは、もう何も無いだろう。